ソネット集

夏目漱石シェイクスピア劇を受容するにはその「詩國」の住人でなければならぬと言っている。東京朝日新聞の記事参照。

詩国住人、どんな詩が胸にあれば良いのか? シェイクスピア劇の世紀の名優ジョン・ギールグッドの吹き込んだレコードには「ソネット集」第29番第30番。

私なら「ソネット集」第105番。

 

「美しく 優しく 真実の」が私の主題のすべてである

美しさ やさしさ 真実の は 別々にならずいぶんある

だが この3つが一人に宿ったことはかつてない

'Fair, kind, and true,' is all my argument.

'Fair, kind, and true,' have often lived alone.

Which three till now never kept seat one.

 

じゃじゃ馬ならし」のカトリーヌは 美しく 真実であるが 優しくない。

「終わりよければすべてよし」のヘレナは美しく優しく真実である。コルリッヂはシェイクスピア作品中最高の女性の折り紙をつけるが、暗い。男の選択を誤っている。

ハムレット」のオフィーリアは劇中、生存中の姿に凄みはない。追従者ポローニアスの娘、陰謀をたくらむレアティーズの妹、普通の美しさに思える。優しいというより翻弄される弱さがかわいそう。真実を狂うことでしか表現できなかった人。しかし、fair で kind そして true な最高の女性であったことは 葬儀の場での王妃ガートルードの言葉で明らかにされる。

Hamlet.          What the fair Ophelia!

QueenSweets to the sweet : farewell !     [Scattering flowers

I hoped thou shouldst have been my Hamlet's wife;

I thought thy bride-bed to have deck'd, sweet maid,

And not have strew'd thy grave.

ハムレットの口から「FAIR うつくしいオフィーリア」の言葉がもれ 続いて

王妃の「KINDやさしく TRUE本当 の人であった」過去形での表現が痛々しい。

 

シェイクスピアはオフィーリアを「ソネット集」第105番で予言した女性として描いている。