土居光知 言葉とリズム

シェイクスピア劇は 別世界 詩の国の物語。言葉には詩の響き、リズム。

日本語にすると、「ハムレット」第二独白、

ながらふべきか 但しまた

ながらふべきに あらざるか

ここが思案の しどころぞ

運命いかに  つたなきも

これに堪ふるが ますらをか

またさにあらで 海よりも

深き遺恨に 手向うて

これを晴すが もののふ

矢田部訳 「新体詩抄」明治15年 東京帝国大学植物学教授矢田部良吉史学教授外山正一哲学科助教井上哲次郎 丸善書店 当時丸屋善七書店

西洋の韻律を持ち込むため七五調を採用。

シェイクスピア劇は詩劇であり 詩として訳されねば と私は言うが、難題。1明治時代、詩は漢詩しかなく、花鳥風月の贈答目的の和歌が主流であった日本で思想表現の器としての詩 様式がなかった。今でも現代日本の思想詩のおススメ 思い浮かびません。翻訳となると、英詩は5音歩行が民族的原型。日本は「竹取物語」から「平家物語」まで6音歩行、抒情的な部分に4音歩行が交錯する。それでも上記の達成あり。

 

詩の響きを探索して何になるの? イマドキの人は英文学をやらず英語学 ITのライセンス契約を英文で書いたり、国際弁護士とかでもめ事解決がサイコーと思っている?

言葉とリズムに取り組んだ人として土居光知がいる。戦時期の東北大学英文学教授。

真人。

講義内容 昭和2年

古池や蛙とびこむ水の音

Into the old pond / Leaped a frog, / Splash!

A frog leaped in ... / Sound of water.

情緒のちがいの説明をされた、Splash! が最初にでてくる形もあったという。

契約書や紛争解決の英語とは無縁の別世界。

昭和17年末長男がガダルカナル島で戦死。「本当に悲しい」と公言し新聞沙汰に。名誉の死を賜ったのであり、女々しい発言は帝国枢要の人物、大学教授にあるまじき非国民的言動、という時世。英文学教授というのは浮世ばなれのした存在で時局と無縁、別世界の生き物との印象。戦時においても心のままに。実際の土居は教え子を軍関係の語学の仕事に押し込み兵役(死)を回避させ、東京空襲の始まる時期も正確に把握、その前に仲人挙式手配、軍勤務の教え子より情報通。無知からくる勇気ではない。詩のリズムを研究し「日本語の姿」の著者 土居光知は 言葉だけでなく人柄も理想も無類の存在であった。