「アントニーとクレオパトラ」42場 場面転換の醍醐味

アントニークレオパトラ」はシェイクスピア劇の中で、最も場面数の多い悲劇である。42場で構成される。

場面転換は演劇の醍醐味

 

それぞれの場面の雰囲気対比が面白い。

1幕-1場 クレオパトラの宮殿での二人の溺愛の世界

1-4 ローマ シーザーの邸宅 アントニーの悪評

 

状況把握迷いが生じない。激動の核心の予告編。

1-3 アントニーのローマへの出発 クレオパトラの言葉の明示

4-5 アントニー軍から敵前逃亡兵多数

4-6 シーザー 軍の前面に元敵将兵 四面楚歌の策

4-10 アントニー作戦会議 優勢 さらに海戦の判断

4-11 シーザー側 作戦会議 敵の動きを察知 陸戦選択

 

高貴さを実証する事実の劇的提示

4-7 アントニー軍の勝勢 

4-8 アントニー軍配の勝利 クレオパトラと喜ぶアントニー

4-9 アントニー軍配下のアントニーの高貴さ賛美

これらの場面があるから 二人の死の場面が壮麗となる。

 

場の変転による心の変化の劇的表現

3-2 ローマ シーザーの邸宅 衝突回避のためシーザーは姉をアントニーに差し出す。アントニーと新妻の言葉の交換

3-3 クレオパトラの宮殿 政略結婚の報に クレオパトラと侍女たち 新妻の品定め。

4-4 出陣のアントニーに鎧を着せるクレオパトラ

4-12 敗勢濃厚 戦場でのアントニー クレオパトラを疑い激論

4-13 クレオパトラの侍女 アントニーは気が狂ったとし クレオパトラ自害の偽報をアントニー

4-14 アントニー クレオパトラ自害の報に 自死を決意。

4-15 瀕死のアントニークレオパトラの語らい。

それぞれの場がそれぞれ興味深い。

4-15 アントニーの死に際。

5-2  死に向かい合うクレオパトラ

 

現代の舞台では42場の上演はむつかしいのであろう。

エリザベス朝の劇場は

外舞台(主要) 内舞台(寝室など) 上舞台(城壁、バルコニー) 窓舞台(2つあり「アントニークレオパトラ」ではアントニー軍作戦陣屋とシーザー軍作戦陣屋に最適。

 

私はBBC版を見た。英語で下品に騒ぐクレオパトラ、本当に死にそうな声を出すアントニーで隣室から苦情が来た。1953年グレン・バイアン・ショー演出の「アントニークレオパトラ」がセリフの朗誦が優れていたとされる。詩の朗誦の劇である。女王と勇者の叙事詩。気品ありたし。

 

この作品は評価が歴史的に変化。長く上演されなかった。コルリッジが most wonderfull play  と激賛して再評価。 映画向きかもしれないが 製作費が巨額になりそう、かつ クレオパトラ役 今日の女性論 エジプトの人が見ても納得は むつかしいかな。

 

国境、民族、道徳を越えた自由で純粋な恋愛感情 素晴らしい劇 と私は思います。