ソネット集 名優ギールグッド選

 シェイクスピア俳優ギールグッドの選んだソネット 29番30番 気になる人のために。

 それは 愛の賛歌。男にとっての女 女にとっての男 / 菩薩像 (象徴性)

 ソネットという詩の様式は詩人によって構造・機能に差があり、シェイクスピアソネットは最後の2行に向かって激しく進行する。最終2行を凝視して胸いっぱいになりましょう。

 ソネット29番30番で想起されるのは「ロミオとジュリエット

11行12行 暗い大地から舞い上がり 天国の門に賛歌 バルコニーの場

29番全体は 市から追放された失意のロミオ。

          

 SONNET 29  William Shakespeare

  When, in disgrace with fortune and men's eyes,
  I all alone beweep my outcast state
  And trouble deaf heaven with my bootless cries
  And look upon myself and curse my fate,

  Wishing me like to one more rich in hope,
  Featured like him, like him with friends possess'd,
  Desiring this man's art and that man's scope,
  With what I most enjoy contented least;

  Yet in these thoughts myself almost despising,
  Haply I think on thee, and then my state,
  Like to the lark at break of day arising
  From sullen earth, sings hymns at heaven's gate;
    For thy sweet love remember'd such wealth brings
    That then I scorn to change my state with kings. 

 

世間に見放なされ

うらぶれた身の上を嘆きながら
天に向って空しく叫び
振り返って不運を呪う


希望に溢れた人間でありたいと願い
誰それのように格好良く、誰それのように友人に恵まれたいとか、
誰それのように才覚があり、誰それのように力量があればとか、

自分の境涯に満足することがない


だがそんなときも
君のことを思うと心が弾み、たちまちこの身は、
夜明けのひばりのように舞い上がり

暗い大地から天国の門に向かって讃歌をうたう

  君から受けた甘美な愛を思い出して心は豊かになり
  たとえ王とだってこの身を取り換えようとは思わない

 

SONNET 30  最後の2行

But if the while I think on thee, dear friend,

All losses are restored and sorrows end.

 

 

静かに心地よい思いに浸ろうとして、過ぎた昔の思い出を呼び戻そうとするが、求めて適わなかったことの多さに溜息し、かけがえのない時を無駄にしたと古い嘆きを蒸し返す。目は涙に濡れ 時を刻まぬ死の闇に去った大事な友への思いに、消えた愛惜の思いが息を吹き返し、忘却したはずの幾多の面影に思いを馳せる。こうして過ぎ去った嘆きを嘆き返し、苦しみの一つつひとつを重苦しく数え直し 呻き尽くした思いを悲しく語るのは、勘定を払い直すようなもの、未払いであるかのように。

   そんな時でも君のことを思えば わが友よ 
   失ったものは戻され、悲しみはやむ。