ジューリアス・シーザー 現代劇

3月15日が近づき、BBC制作の「ジューリアス・シーザー」を見た。ブルータス役の俳優に生気が乏しく、衣装が貧弱、場面展開退屈、ボソボソ小声で話しているだけ。くだくだしい。カットした方がいいが、本当にもりあげるには4時間(トゥリー上演の事例)、数億の製作費が必要か。

 

しかし、シェイクスピアのこの作品には多様な魅力がある。

楽しみ方として、イギリスでは学校演劇。大勢に役がふれる。元老院議員役とか、シーザーの弔い合戦のローマ兵とか気分がいい。学園生活の良い思い出。ローマ史の勉強の核心部たりうる。「平和 解放 自由」のスローガンで暗殺が起こる。陰謀と扇動。現代の政治状況にも通じ、考えさせられるセリフが続く。

冷静に理性に訴えるブルータス それに続くアントニーの演説は激しく群衆の感情にうったえる。スピーチの教科書

台詞

「臆病者は死ぬ思いを重ねた上でやっと死ぬが、勇者が死を味わうのはただ一度だけだ。」2幕2場32~

ただ、BBC版では シーザーもブルータスも同じ この言葉の雰囲気で死を迎え、なぜか興ざめ。名言の平板な受け取り、常套化はツマラナイ。それぞれに個性ありたし。

 

私には興味津々なセリフ

5幕1場

ブルータス「正しい言葉はよこしまな手にまさりますぞ」

Good words are better than bad strokes.

アントニー「君は正しげな言葉を口にしながらよこしまな手をくだした男だ。シーザーの胸部を突きながら、君は「シーザー万歳」と叫んだ男だ」

In your bad strokes, Brutus, you give good words. Within the hole you made in Caesar's heart, Crying 'long live! hail Caesar!'

 

独立戦争前後のアメリカでこの劇は好評だったという。

先行き不透明 権力を倒した後の混乱 多数派工作と名演説。

 

ヒットラーの演説はアントニー系。

In your bad strokes(南京虐殺),東条首相, you give good words(八紘一宇). 

プーチンとゼレンスキーの演説競争も想起される。

現代劇として色褪せない作品。