終わりよければすべてよし

わたしはBBCシェイクスピアでこの劇を見ています。「終わりよければすべてよし」はシリーズ中の傑作。名優ドナルド・シンデンのフランス王は堂々とし、深慮の伯爵老夫人に映画女優のシーリア・ジョンスン。名優が引き受けたくなるシナリオ。現実の苦みを直視しつつ、どんな犠牲を払ってでも究極の幸せ、良い終わり、を願う老人たち。演じたい役なのでしょう。

 

1991年5月、岩波シネサロンの荒井良雄朗読シェイクスピア「終わりよければすべてよし」しっとりと落ち着いた語りであった。他の喜劇はもっと早いテンポで朗読してみえた。ゆっくりだったのはヘレナのペースにあわせたから。荒井の把握は、この劇はヘレナの視点から ということ。バートラムの許しがたいあらゆる言動を忍耐し初志を貫き、最後はバートラムとむすばれる純愛と奉仕の精神の物語。難病の癒えたフランス国王、寛容と慈愛の伯爵夫人。 若きバートラム伯に同化して劇の世界にはいっては 後味が悪くなるでしょう。